2000年6月26日より伊豆諸島三宅島付近において群発地震の発生が始まり,三宅島内においてはその後,群発地震が続くと共に,7月8日,7月14日,7月15日,8月10日と噴火が続き,8月18日には一連の活動中で最大規模の噴火が発生した.
このページでは関連参考情報として,地震活動開始後の三宅島の気象状況について簡単に整理しておきたい.
利用した資料は気象庁のAMeDAS三宅島観測所(三宅島測候所に併設)の観測値である.比較資料として利用したのは,同観測所の準平年値(1979-1990の平均値)である.
三宅島は測候所があり,当然通常の平年値(1961-1990の平均値)が使用できるわけであるが,直近のデータとして得られたのがAMeDAS観測値であり(測候所の地上気象観測データとは若干異なる),特に風観測値の整合性の問題から,ここではアメダスデータとその準平年値のみを利用することとしている.
利用したデータの期間は,すべて8月22日までのものである.
7月は気温が全般に準平年値に比べて高めで,風も強い日が多く,降水量も準平年値を上回っている(ただし標準偏差の範囲内).これに対して,8月に入ると気温は低めになり,風も弱い日が続き,降水量・降水日数共に少なくなっている.
最近20年間の三宅島における強雨の記録を下に示すが,これに見るように,三宅島では,まとまった雨が記録されることが珍しくない.2000年に記録された降雨イベントでもっとも強かったのは,7月7日の日降水量180mm,最大1時間降水量36mmであり,下記の記録には遠く及ばない.
本年の三宅島の活動が活発になった時期(8月)は,気象条件としてはかなり平穏な状況下であると言ってよさそうである.このことは,降灰処理や泥流対策などの面ではやや恵まれたといえるかもしれないが,(特に島外における)危機意識という点ではマイナスに働いているのかもしれない.
読売新聞報道によると,8/29の噴火後に「三宅島北部」で気温の一時的な上昇が見られたとのこと.データソースは示されていないが,おそらくAMeDAS三宅島(=三宅島測候所)の観測値から言っているものと思われる.1時間値でもある程度確認できる.最も近い新島の気温変化と比較すると,噴火時刻が04:35頃とのことなので,5〜6時の昇温がそれに当たると思われる.
やや古い資料であるが,気象庁所管観測所の資料を用いて,島北部の神着(測候所)と島東部の坪田(三宅島高校)の月降水量を比較してみた.両地点間の距離は5kmほどであるが,降水量は必ずしも同じではなく,5年間だけで見ても100mm以上の差があることも少なくない.両地点では,月降水量がおおむね200〜400mmの範囲内であることを考えると,100mmの差がけして小さな差ではないことが分かるであろう.
すなわち,小さな島内と言っても,降水量は一様ではなく,大きな差を生じることもある.これは,三宅島の特性というより,日本の降水量の一般的な特性と言ってもいい.なお,ここで見ているのは月降水量だけであるが,日降水量などで見れば,更に両地点間の降水に違いがあることが見えてくるはずである.