2003年5月26日東北地震災害 研究関係情報ページへ
築館町館下地区地すべり関連資料
2003年5月26日18:24頃の地震に伴って,宮城県築館町館下地区で地すべり状の崩壊(流動性崩壊)が発生た.崩壊源頭部の幅は約15m,長さ約90m,傾斜は約8度.堆積域は幅約20m,長さ約100mほどであった.現地の地質に関する詳細な情報を持たないが,細粒化された軽石を含む火砕流堆積物と思われる.
5月30日付河北新報の報道によると,現場付近は30年ほど前に「かつて沢だったところを畑として整地する際に埋め立てたといい、土砂崩れがあった中腹にはため池もあった」とのことである.
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鳥瞰図(カシミール3Dで作成) |
大正6年修正測量1:50000地形図「若柳」,同昭和8年修正などを見ると,現在の地形図では確認できない小さな谷が館下集落付近に確認できるので,地形改変が行われていたらしいことが,地形図からも読み取れる.
農地造成による地形改変の様子を簡単に見るために,新旧の地形図を元にした簡易判読を行った.用いた地形図は,1:25000地形図「築館」昭和43年測量(以下では「旧」)と,同平成13年修正測量(以下では「新」)の2枚である.地形図は,作成時期によって作成手法が異なることから,単純に重ね合わせることができない場合もあるが,この2つの図に関しては,いずれも写真測量を元にして作成されたものであり,作図法上大きな差はないものと判断した.新旧地形図をオーバーレイし,盛土部および,旧地形図では読み取れて新地形図では読み取れない谷を示したのが下図である.一見して,新地形図のほうが斜面がなだらかかつ凹凸が少ないことがわかる.また,この付近だけで少なくとも8本程度の谷が埋められていることが読み取れる.■で示したのは,GPSで簡易測位した地すべりの縁辺部位置である.補正無しのため10m前後の誤差を含み,地形図自体の誤差,オーバーレイの際の誤差を含むが,おおむね今回の地すべりが埋められた谷の中で発生したとみなせそうである.地すべりの発生した谷の縦断面を,新旧地形図から読み取り,盛土の体積を概算すると,約22000m3ほどになる.
1:25000地形図「築館」昭和45年発行と平成15年発行を重ね合わせたもの(カシミール3Dで作成)
赤:地形図上で明瞭に読み取れる埋土部 青線:平成15年発行地形図では読み取れないが,昭和45年発行地形図では読み取れる谷 ■:GPSで簡易測位した地すべりの縁辺部 [砂防学会誌Vol.56, No.2(掲載予定)より引用]
制作:東北大学災害制御研究センター 牛山素行 ->Here
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