2003年豪雨と1997年豪雨
水俣付近での近年の豪雨イベントとしては,1997年7月10日未明に,隣接する鹿児島県出水市の針原川で土石流災害(死者21名)を発生させた豪雨が思い浮かぶ.下表に見るように,水俣近辺のAMeDAS観測所の過去の豪雨記録を見ると,この日の記録がいくつかあることがわかる.
番号 |
地点名 |
統計期間 |
最大1時間降水量[mm] |
記録日 |
最大24時間降水量 |
記録日 |
最大48時間降水量 |
記録日 |
最大実効雨量(半減期48時間) |
記録日 |
水俣周辺AMeDAS観測所の既往記録 |
86451 |
水俣 |
1979-2000 |
75 |
1989/7/10 |
377 |
1997/7/10 |
486 |
1997/7/11 |
420.1 |
1997/7/10 |
86511 |
一里山 |
1979-2000 |
93 |
1980/7/26 |
474 |
1995/7/4 |
658 |
1995/7/4 |
543.5 |
1995/7/4 |
88066 |
出水 |
1979-2000 |
74 |
1979/7/17 |
383 |
1995/7/4 |
544 |
1997/7/11 |
437.7 |
1997/7/11 |
今回の記録 |
熊本県所管 |
深川 |
|
91 |
2003/7/20 |
379 |
2003/7/20 |
428 |
2003/7/20 |
394 |
2003/7/20 |
この表に見るように,今回の記録は,1時間降水量で見ると1997年の事例や,過去の事例と比べてやや大きいが,24時間などやや時間の長い積算降水量で見ると,1997年の事例に及んでいない.もう少し詳しく見るために,1997年豪雨時の,針原川近傍の出水浄化センターにおける降水状況と,今回の深川における降水状況を,同じ5日間でグラフにしてみたところ,以下のようになった.
この二つの豪雨イベントを見比べると
- 1997年豪雨では,土石流の発生は降雨終了後だが,2003年豪雨では激しい1時間降水量が記録されている時間帯に発生した.
- 1時間,2時間降水量は2003年豪雨の方が大きい.
- 24時間降水量,48時間降水量,実効雨量(48時間半減期)は1997年豪雨の方が大きい.
- 先行降雨は1997年豪雨の方が遙かに多く,2003年豪雨では,前日の7月19日に50mm程度の雨があったものの,それ以前の4日間はほとんど降水がない状態であった.
などの相違が読み取れる.2003年豪雨は,短時間の降水量が大きかったことが大きな特徴といえる.しかし,短時間降水量の強さだけで,集地区で見られたような大規模な崩壊に結びつくかどうかはよくわからない.1997年豪雨の際に,この付近で崩壊などが起こらなかったのかどうかなど,確認を進める必要がある.
白三角が気象庁,黄三角が国土交通省,赤三角が熊本県観測所である.この図は,国土地理院の数値地図50mメッシュをカシミール3Dで作図したものである.観測所位置は,気象庁および国土交通省については公開されている緯度経度をもちいた.熊本県については,「熊本県雨量・気象情報サービス」の地図から筆者が読み取ったもので,かなり誤差が含まれる.
2003年7月九州豪雨災害 トップへ
静岡大学防災総合センター 教授 牛山 素行
E-mail:->Here
牛山素行トップページ