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災害研究- 災害事例の調査・研究情報- 2007年4月20日岩手県雫石町葛根田地熱発電所付近の地すべり

2008年4月20日岩手県雫石町
葛根田地熱発電所付近の地すべりに関するメモ

静岡大学防災総合センター 教授  牛山 素行

2008/4/23作成開始

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災害概要・現地踏査メモ

2008年4月20日18時45分頃(4/22付岩手日報による),岩手県雫石町西根の,東北電力葛根田地熱発電所付近で地すべりが発生し,県道194号西山生保内線(冬期閉鎖中)を閉塞し,葛根田地熱発電所の一部を損壊させた.人的被害や人家への被害は生じていない.報道では「土砂崩れ」となっているが,現地の状況からみた,地すべりと考えて差し支えないと思われる.

地すべりが発生したのは,葛根田地熱発電所の南西方で,地すべり本体の下部付近では,幅約60m,滑落崖上端部までの距離約240m,道路面付近からの比高約110mであった.崩壊の深さは不詳だが,面積から見て移動した土塊の堆積は,数万m^2規模かと思われる.

地すべり付近の地質は,1:50000地質図「雫石」(須藤・石井,1987)によると,新第三紀中新世の砂岩・シルト岩・凝灰岩となっている.また,周辺には多数の地すべり地形が見られ,同地質図にも今回の地すべり発生場所の尾根側に「頂部滑落崖」が記載されている.また,防災科学技術研究所の公開している地すべり分布図でも,今回の地すべりを含む一体が「斜面移動体」として示されており,この場所で地すべりが発生したこと自体は特に不思議なことではない. 周囲に人家がないことや,道路が通行止めとなっていること(仮に解除されたとしても地すべり土塊が堆積している地点は元々一般車は立ち入りできない場所)から,4月23日時点で活動している地すべり本体による住家の損壊や一般住民の人的被害が発生する可能性はほとんどない.

地すべりによる二次的な被害が生じるとすれば,地すべり土塊がさらに移動したり,あるいは拡大し,葛根田川を現在より大規模に閉塞して天然ダムを形成し,これが決壊して下流に土石流となって流下する場合が考えられる.ただしこれは非常に危険側に状況を想定した場合の可能性のひとつであり,すぐにも危険が迫っていることを指摘するものではない.地すべりの監視,情報伝達体制の整備,対策工事などが行われれば,十分に回避可能な危険であると思われる.

参考文献
須藤茂・石井武政:5万分の1地質図幅「雫石」,地質調査所,1987.


静岡大学防災総合センター 教授  牛山 素行
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