NIFTY-Serve鉄道フォーラム全国オフ SC'96 分科会第一部配布資料

廃線の調査と探訪

鉄道フォーラム専門館「鉄道歴史談話室」会議室担当車掌  牛山素行

《目次》
1.私と廃線
2.廃線との出会い
2.1 廃線趣味のプロセス
2.2 出先での発見
2.3 地形図からの発見
3.廃線に関する情報収集
3.1 対象廃線の特定とその歴史の調査
3.2 地図による調査
3.3 その他の各種情報調査
4.廃線探訪
4.1 探訪行程の策定
4.2 探訪時に有用な持ち物等
4.3 現地で注目するポイント
4.4 いわゆる現地情報に関するあれこれ

1.私と廃線

 私が鉄道に興味を持ち始めたのがいつ頃からであったかはよくわかりません。多くの趣味者の方がそう感じられているように「物心付いた頃にはすでに・・・」という状態でした。その鉄道趣味の中で、更に「廃線」という分野に踏み込んでいったのはいつか、でありますが、これもまたよくわかりません。小学校4年頃に、上田交通北東線公園前駅跡で何枚か写真撮影をしていることが記録に残っていますが、「廃線の素性を調べ現地を歩く」という行為をしたのは、中学1年頃、諏訪鉄山専用線跡を訪ねたのが最初であったでしょう。その後、長くこの趣味は私の中で「潜伏」しておりましたが、1991年夏、鉄道フォーラムに入会し、そこに「失われた鉄道」という廃線の話題を専門に扱う会議室が存在することを知り、全国の同好の士の方々とリアルタイムに情報交換をする感動を覚えて以後、急速に深まり、今日に至っております。今回は、「失われた鉄道」→「知られざる鉄道」→「鉄道歴史談話室」と、約5年に渡って続いてきた鉄道フォーラムの通称「廃線会議室」の中で培われてきた廃線調査に関するノウハウのあれこれを、私なりに整理してみたいと思います。

2.廃線との出会い 目次へ

2.1 廃線趣味のプロセス

《基本型?》@何らかの形で廃線らしきものを発見する→Aその素性を調べる→B現地を歩く

・Aまでで完了、Bの後に「報告作成」など、パターンはいろいろ

2.2 出先での発見

・線路際から分かれる、緩いカーブを描く道路

・堤防でもなく、道路でもなく、用途不明な土手

・河川の両岸にあるコンクリート塊

2.3 地形図からの発見

3.廃線に関する情報収集 目次へ

3.1 対象廃線の特定とその歴史の調査

 網羅的な一覧表としては「鉄道廃線跡を歩く」収録のものが便利だが、位置に関する情報がないのが残念。国鉄特定地方交通線関係は非常に多くの出版物が存在。概略をつかむだけならば1982年以前の時刻表(1975年以降なら古書店で\500以下)を入手するのもよい。個別の路線については「鉄道百年略史」「鉄道総合年表」。駅関係は「停車場一覧」が詳しい。私鉄については「私鉄史ハンドブック」でたいていの問題は解決。国鉄・私鉄の廃線リストの電子データは、鉄道フォーラム専門館データライブラリー12番線にある。

3.2 地図による調査

《現行地形図》

 国内の最も基本的な地図としては国土地理院発行のものがあり、全国を網羅しているものには1:25000地形図、1:50000地形図、1:200000地勢図がある。1:200000地勢図については全版を1冊にした冊子(日本地図センター編、1988:建設省国土地理院の全国20万分の1地図)が存在。地形図・地勢図は全国主要書店で扱っているが、普通は書店の所在県とその周辺部程度しかそろえていない。

《旧版地形図》

 1:25000、1:50000の旧版地形図は、国土地理院で保管しており、一般の閲覧が可能。関東地区の場合、つくばの「地図と測量の科学館」か、東京大手町の関東地方測量部閲覧室が利用可能。ただし、いずれも利用時間は平日昼間のみ。閲覧は無料だが、複写は1枚\500で、収入印紙で支払う。1:50000地形図は明治末期から現在まで、全国おおむね10年以内くらいの間隔で作成されているが、1:25000地形図は、主要都市周辺を除くと昭和40年代後半以後しか存在しない。

《その他の地図》

 大都市部については、国土地理院発行の1:10000地形図が存在。また、一部地域では1:2500、1:5000の「国土基本図」が作成されているが、更新はほとんどされておらず、受注生産のためやや高価(\1200)。その他の地域でも、市町村作成の1:10000、1:5000、1:2500地図が存在している場合が多い。これらは一般書店にはなく、市町村役場内で入手する。呼称は「白図」「白地図」「管内図」「都市計画図」「基本図」など多様。

3.3 その他の各種情報調査

 各自治体等で出している「○○市史」等の出版物は特定地域に関する情報がよくまとまっていて使いやすいが、二次資料(基本となる資料を基に加工した資料)であるため、過信はできない。調査対象市町村周辺の公立図書館には一般的に所蔵されており、その自治体の属する件の県立図書館にも多くの場合所蔵されている。ただし、発刊されていない自治体も少なくない。特定の日の出来事を知りたい場合には、新聞も有効。いわゆる県民紙の他、数市町村程度をエリアとした新聞が存在することが多い。県立図書館や主要都市の図書館等ではマイクロフィルム化されている場合もあり、閲覧にはこの方が便利。

4.廃線探訪 目次へ

4.1 探訪行程の策定

 現地での移動方法は、徒歩、自転車など、移動速度の遅いものの方が収穫が多い傾向。日程立案にあたっては、なるべく余裕を持った行程を。一般的な徒歩速度4km/hよりはるかに遅いと考えた方が無難。

4.2 探訪時に有用な持ち物等

 最低限必要なのは、現地の地図(書込可能なもの)、メモ帳、筆記用具。カメラ、旧版地形図、懐中電灯がそれに準ずる。メモ帳などの筆記具はいろいろと工夫の余地あり。そのほかはそれぞれの趣味に応じて変化する。思いつくものとしては、メジャー、コンパス、歯ブラシ(汚れ落とし用)、ビニール袋(採集物用)など。非常連絡用に携帯電話も有効か。携帯情報端末に各種データ(廃線一覧、未成線一覧、バス事業体一覧等)を読み込んでおくと有用な場合も多い。

 あらかじめ、自分の歩幅を計っておくと、歩数から移動距離が測定でき、地図上での位置把握などに便利。デジタル万歩計を併用すると更に便利。

4.3 現地で注目するポイント

4.4 いわゆる現地情報に関するあれこれ

 廃線探訪の際は、現地の方からの聞き取り調査も有効になる。ただし、特に古いできごとの場合、思い違い、記憶違いが往々にしてあるので、複数の方に同じ事を伺ったり、資料にあたるなど、情報を補強することが望ましい。例えば、鉄道に勤めていた等の場合であっても、必ずしも正確性が高いとは限らない。ただし、お話を伺う際には、相手の情報を疑うようなそぶりはけして見せない方がよい。
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