東北地区における2002年7月豪雨

7/10-11の48時間降水量分布

1979年以降の48時間降水量最大値

• 東北地方の一部でも，この地域としてはやや強い降雨が記録された．最も大きな記録は岩手県の釜石で7月10日から11日の48時間降水量375mmが記録された．これは，1979年以降の48時間降水量最大値を10mmほど上回ったことになる．他にもいくつかの地点で1979年以降の24時間降水量，48時間降水量を更新したが，その評価は現時点ではわからない．無論これは現在の断片的な検討の結果であり，結論ではない．
  
  
• この豪雨により，釜石では土砂崩れにより2名が死亡し，三陸地方では土砂災害が散発した．また，岩手県東山町では，町内を流れる砂鉄川が氾濫し，床上浸水470棟を記録するなどし，岩手県の都道府県別の被害高は，今回の事例中で最大となった．
  
  
• 岩手県の1971年以降の主要豪雨災害事例を，浸水家屋数に着目して抽出すると下表のようになる．統計の種類が異なるため，直接比較はできないが(一般に消防庁統計の方が多くなることが多い)，災害翌日の7/12現時点の情報から判断すれば，今回の被害は，1971年以降の岩手県の浸水被害としては最大級であると言っていいように思われる．

• 今回の被害は7月12日10時現在の総務省消防庁資料による．他の事例は，気象庁資料による．
• 岩手県の7月12日19時現在の資料に寄れば，床上浸水1071棟，床下浸水3018棟．東山町など東磐井郡内では被害調査が十分進んでいないという報道もある[7/13岩手日日新聞]

一関(岩手県一関市竹山町20−1)
	●過去の記録上位3位 統計期間:1979-1999 ○1時間降水量[mm] 49:1994/08/19 43:1990/10/26 40:1991/08/31 ○日降水量[mm] 153:1986/08/05 122:1991/08/31 119:1987/08/17 ○24時間降水量[mm] 172:1986/08/05 147:1986/08/06 125:1991/08/31
千厩(東磐井郡千厩町千厩字北方105−1)
	●過去の記録上位3位 統計期間:1979-1999 ○1時間降水量[mm] 59:1982/08/21 47:1994/08/19 34:1999/09/01 ○日降水量[mm] 135:1986/08/05 103:1987/08/17 102:1990/11/04 ○24時間降水量[mm] 149:1986/08/05 131:1986/08/06 120:1981/08/23
大東町役場(国土交通省)
	●過去の記録 ※データ未入手

• 特記以外は気象庁AMeDAS観測所の観測値．
  
  
• 24時間降水量上位記録の集計期間は2000年まで．集計期間が1979年以降となっているのは，AMeDASの整備が1979年に完了したため．
  
  
• 今回の24時間降水量最大値は一関202mm,千厩175mm，大東町役場163mm，48時間降水量最大値はそれぞれ223mm,189mm,173mmであった．すなわち，今回の事例は，一ノ関周辺における連続雨量としては，1979年以降最大規模の豪雨であったと考えてよい．
  
  
• 一関における1901年以降の日降水量記録を見ると，1908年に212mmという記録があるが，これ以外に今回の記録を明らかに上回る記録は今のところみつけていない．
  
  
• 一方，1時間降水量は最大でも30mm前後であり，1979年以降の上位3位に及ばない．