今回の豪雨イベントでは,AMeDAS観測所における24時間降水量,48時間降水量の記録が,AMeDAS統計開始(1979年)以来最大値,もしくは第2位という値が記録された.「史上最大の豪雨」などというものは,簡単に判断することはできない.激しい豪雨が生じるのは限られた範囲内であり,その中に観測所がたまたま存在していれば記録されるが,そうでなければ見逃されてしまう.過去の豪雨になればなるほど,その可能性が高い.AMeDASの24時間降水量最大記録は,1998/9/25の高知県繁藤での979mmだが,AMeDAS以外も含む24時間降水量の最大値としては,2004年8月1日の徳島県海川での1317mmなどが知られているが,この時近傍のAMeDAS観測所ではここまでの記録は存在しない.今回も,より大きな記録が発見される可能性もある. このような事情もあり,「過去の豪雨との比較」はそう簡単なことではない.方法論ではなく,データの問題である.ここでは,手元にある過去の大規模豪雨のうち,1時間降水量データが得られるものを元に,いわゆるDD解析図を作成してみた.これは,横軸に降雨継続時間,縦軸に降水量をとる図である.それぞれの豪雨イベント毎に,最大1時間降水量,最大2時間降水量,,,と計算し,それぞれの継続時間毎にこの図上にプロットする.現れた波形を見ると,その豪雨イベントが,短時間降水量が大きいことが特徴であったか,長時間降水量が大きいことが特徴であったか,などを把握することができるものである. 別ページにも述べたように,今回の豪雨は,短時間降水量はそれほど記録的なものではなかった.この図を見ても,1時間〜4時間降水量などは,今回の豪雨(050904_06 Mikado)より,2000年東海豪雨時の名古屋(000910_12 Nagoya)や,2003年7月水俣土石流災害時の熊本県深川(030717_20 Fukagawa,県雨量計),1967年羽越豪雨時の新潟県胎内第二ダム(670828_29 Tainai)の方が大きいことがわかる.24時間以下の降水量に関しては,1998年高知豪雨時の高知県繁藤(980923_25 Sigeto)や,1965年奥越豪雨時の福井県本戸(650914_16 Hondo)の方が明らかに大きい.この6事例の中で今回の豪雨が最も大きな記録となるのは,27時間降水量以上についてであった. 今回の事例は,あらゆる面から見て史上最大の豪雨ということはないが,最近二十数年間の中では,最大級の豪雨の一つであったとは言ってよいかと思われる. |
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