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宮崎市災害掲示板が機能した

2005/9/15 10時作成 同20時表現修正

 ある火山学者のひとりごとでも紹介されているが,宮崎市役所が開設した「台風14号接近(又は上陸)に伴う災害情報」という電子掲示板が情報交換の場として機能しており,読売新聞記事などでも紹介されている.
 市町村などが,「双方向の情報交換」といった趣旨で掲示板を開設することが一時はやったが,閑古鳥か,荒らされるかして,全く機能しないというより有害無益であることの方が多かったように思われる.無論,掲示板というシステム自体の問題ではなく,その運用方法に問題があるわけであり,「顔の見える参加者」という構造をつくり,地域の有益な情報交換に役立っている八代市の事例(日経BPガバメントテクノロジー記事)などもある.
 今回の宮崎市では,読売の記事によれば,「市災害対策本部に詰める情報処理班の職員3人がパソコン3台を使い、本部に集約された情報をもとに回答している」とのことで,単なる不特定多数間の書き殴り合いの場ではなく,行政からの確実なレスポンスが期待できたという点が特筆される.筆者も9/7-8頃に同掲示板を見ていたが,実は「宮崎市災害対策本部」というコテハンの書き込みを見て,ネット上の情報に対する警戒心から,はじめは偽物ではないかとすら思った.しかし,書き込み内容をよく見て,どうやら本物らしいとわかり,率直に言って心底驚愕した.
 この事例で重要なことは,
  1. 掲示板に常時レスポンスする体制を行政がとったこと
  2. 災害対策本部に情報担当者を常駐させていること
  3. 掲示板の入り口が,市役所トップページという,誰でも想像がつく場所に置かれていたこと
であると考える.
 2004年の福井豪雨時の福井市役所ホームページでは,ほぼリアルタイムに避難勧告の発表を伝えていた.これは,2003年以前にはほとんど見られなかったことであり,web利用のリアルタイム避難勧告の初期の事例と言える.後日,福井市役所の防災担当者にヒアリングしたところ,災害対策本部に広報担当者が常駐していたので,その担当者が掲示したのであろうとのことであった.福井市のケースでは,ホームページに避難勧告を随時掲示することなどは,防災担当部門として,特にあらかじめ計画していたことではなかったとのことであり,いわば,広報担当者が,指示されなくても自らの職責を全うしていたと言えよう.
 今回の宮崎市のケースは,あらかじめ計画,訓練されていたことなのかどうかなどは,よくわからない.しかし,結果として,2004年の福井豪雨より更に一歩進んだ現象が見られたことは確かであろう.また,その掲示板の所在地が,よく探さなければわからないような場所ではなく,誰でも容易に想像がつく「市役所の入り口」に置かれていたことも,当たり前ではあるが重要なポイントである.
 筆者が2004年11月中旬に行った市町村の防災担当者対象の調査(配布数737通,364通回収)によると,「防災担当部署からの緊急のお知らせを,市役所のホームページ(「最新情報」など)に掲載する場合,そのお知らせを作成してからどの程度の時間が必要だと思いますか」に対する回答は下図のようになった.今回の宮崎市や福井市のような体制ではあれば「数分以内」が可能であろう.しかし,約3割の自治体では,数時間以上を所要すると答えている.ホームページへの迅速な情報掲示が絶対に必要だ,とまでは筆者は考えない.しかし,せめて,「報道機関に発表するのと同程度の扱い」にはすべきではないかと考えている.
 当たり前なことであり,簡単なことだと思うのだが,「災害対策本部に情報(広報)担当者を常駐させること」は,大変重要なことである.


静岡大学防災総合センター 教授  牛山 素行
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