豪雨時の防災情報収集手法の現状について
牛山 素行
1.はじめに
近年のインターネットをはじめとした情報環境の発達は,このような豪雨災害関連情報収集のあり方を大きく変えた.すでにインターネット上に多くの豪雨災害関連情報が存在しているが,このような急速かつ大きな変化の中で,より有効な情報提供のありかたについては模索状態であると言っていい.本研究では,インターネット上にある豪雨災害関連情報の利用実態と,利用者の豪雨災害やその情報に対する認識をアンケートによって調査したのでその結果を報告する.
2.調査手法
アンケートは,ホームページを利用してインターネット上で行った.入り口は,筆者のホームページ,および筆者が管理している「リアルタイム豪雨表示システム」の2ヶ所に設けたのみで,メーリングリスト等での告知は行わなかった.回答は,2001年6月28日〜9月24日の間に受け付け,228名からの回答を得た.
3.調査結果
(1) 回答者の属性 「豪雨災害,防災,気象などに関心がありますか」という設問に対しては「大いにある」が84.2%,「ややある」が14.9%であり,豪雨災害や防災などに関心の強い回答者の意識と解釈してよい.回答者の年齢層は,20代21.5%,30代35.1%,40代23.7%,50代12.3%などとなっており,一般的なインターネット利用者の年齢構成と比べ10代以下が少なく,30代が多い.回答者の居住地は39都道府県に渡り,人口比と極端に異なる偏りはなかった.
(2) 豪雨時に知りたい情報 「もしあなた自身が大雨に遭遇して,情報収集をしたいと思ったとき,具体的にどのような情報を知りたいと思いますか」という設問に対する回答(複数回答可)が図-1である.「現在までに降っている雨の量」と「これから降ると予想される雨の量」の回答者が多く,90%前後に達している.「どこへ避難したらよいか.避難場所など」,「水害や土砂災害に対して危険な場所の位置」を挙げた回答者は50%以下とやや少なく,雨量の観測値など時々刻々と変化する情報の方がより求められている傾向が見られた.

図−1 豪雨時に知りたいと思う情報の種類
(3)豪雨時に情報を入手・交換する手段 豪雨に遭遇した場合に,情報収集のためにどのような行動をとると予想されるか(予想),また実際に過去にどのような行動をとったことがあるか(実体験)を尋ねた設問(複数回答可)に対しては,図-2のような回答が得られた.「予想」において最も多い92%の回答者が挙げたのは,「テレビを見る」および「インターネットの天気予報や災害関係のWebを見る」であり,インターネットが防災情報収集手段として大いに活用されている現状がうかがえた.「携帯電話の天気予報などを見る」を挙げた回答者は36%で,意外に多くなかった.伝統的な「テレホンサービスに電話する」を挙げた人は22%程度であった.
(4)インターネット・携帯電話で見た経験のある情報 インターネットに実在する情報を挙げて,参照経験の有無を尋ねた設問(図-3)に対しては,一般的な天気予報などの情報は,90%の回答者が見たことがあるとしており,警報・注意報の発表状況,気象衛星画像,レーダー画像,AMeDAS情報なども70〜80%の回答者が見た経験があるようである.国土交通省の雨量・水位等情報や,2000年頃から急速に整備が進みつつある都道府県による雨量等の情報を見たことがある回答者は半数以下であった.iモード等でもこれらの情報を見ることができるが,最も多い天気予報等でも見たことがあるとした回答者は42%で,その他の情報についてはほとんどが10%前後であった.また,iモード上でどの情報も見たことがないとした回答者が,40%にも上った.

4.まとめ
豪雨時に知りたい情報としては,90%前後の回答者が「現在までに降っている雨の量」,「これから降ると予想される雨の量」を挙げたが,もっともよく知られている「防災気象情報」(http://tenki.jp/)にはこれらの情報がなく,気象情報に詳しくない人がアクセスしやすい報道機関関係のホームページでもこれらの情報を扱っているところは少ない.災害の発生には,これまでどれだけの雨が降ったかという情報が重要であることはいうまでもない.気象情報は「天気予報」だけではなく,防災上の判断に役立つ情報をより積極的に整備していく必要があろう.
豪雨時に情報収集をする手段としては,従来からのテレビと並んで,インターネットを挙げる回答者が多かった.防災関連情報発信者は,インターネットにおける情報発信の重要性は,従来のマスメディア対する情報発信と同程度であると認識すべきであろう.情報収集手段におけるインターネットとiモード等携帯電話の比較では,前者の方がまだ主体となっている結果が得られた.参照時の容易性や,ネットワークへの負荷を考えると,豪雨災害関連情報のような,特定期間にアクセスが集中しやすい情報は,iモード等携帯電話でも参照できるスタイルで整備することが有利である.使いやすい情報を整備するとともに,その存在を積極的にアピールしていく必要があろう.
今回の調査は,豪雨災害に関心の強い回答者を対象としたものとなった.今後,豪雨災害に特に関心のない母集団,インターネットを積極的に利用していない母集団を対象として調査を行い,今回の結果と対比し,より有効な豪雨災害関連情報のありかたについての検討を続けたいと考えている.
静岡大学防災総合センター 教授 牛山 素行
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