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災害研究- 災害事例の調査・研究情報- 平成16年7月新潟・福島豪雨災害
長岡市福井町付近.位置図(Mapion)
自然堤防上は冠水を免れているように見える.
2004/7/14撮影.(株)パスコ提供

平成16年7月新潟・福島豪雨災害
研究関係情報

東北大学災害制御研究センター  講師 牛山 素行

2004/7/13作成開始 7/14,16,17,18,20,25,26,31加筆

本ページは,本災害に関する研究調査を行われる方の参考になる情報集積を行うことを目的としております.本ページの記述はすべて速報的なものであり,完全なものではありません.間違いがあった場合は修正するなどして,当分の間内容が頻繁に変わる可能性があるのでご承知下さい.また,不適切な表現に気がつかれた場合は,こちらまでお知らせいただければ幸いです.まとまった情報更新を行った際にはメ-ルマガジンでお知らせいたします


刊行物

災害概要

 2004年7月13日から,梅雨前線の活動により新潟県南部,福島県西部を中心とした豪雨が発生した.7月17日17:00現在,全国の被害は総務省消防庁によると死者・行方不明者16名,住家の全壊22棟,半壊144棟,一部損壊92棟,床上浸水3633棟,床下浸水21431棟となっている.被害のほとんどは新潟県で,死者不明者15名,床上3627棟,床下浸水21431棟などとなっており,新潟県の浸水被害としては1971年以降最大となった.
 三条市の五十嵐川,中之島町の刈谷田川,見附市の刈谷田川,村松町の能代川の堤防が一部で決壊した.国土交通省7月14日08時の資料によれば,破堤6箇所,越水17箇所とのことである.これらの結果,見附市の刈谷田川流域で5232世帯に避難指示が出され,三条市では約7000人に避難勧告が出された(消防庁資料による).

現地調査資料

降水状況

 7月13日は,新潟県南部(中越地方)を中心とした豪雨となった.今回の豪雨におけるAMeDAS観測所の最大値は,栃尾(栃尾市)で,7月13日24時の24時間降水量が421mmとなった.この付近は,あまり大きな降水量が記録されていない地域で,1979年以降最大値が,平地部でおおむね200mm前後であった.栃尾の1979年以降最大値は216mmで,今回の記録はこれを200mmほど上回ったことになる.このほかの中越地方や福島県西部のアメダス観測所で24時間降水量の1979年以降最大値を更新した.栃尾,三条,只見では,1時間降水量の1979年以降最大値も更新し,栃尾では1日に3回,1時間降水量最大値を上回る値が観測された.

本災害の特徴・特記事項

牛山が関心を持った事項のメモです.
新潟県中南部は豪雨空白域
筆者はかつて,各観測所における暖候期降水量の平年値と,1時間降水量,日降水量の最大値の間に相関があることから,暖候期降水量から予測された日降水量の最大値より,観測されている日降水量の最大値の方が小さい観測所を,「統計期間中(用いたデータでは最近20年間)に顕著な豪雨が発生していない観測所」とし,このような観測所が見られる地域を「豪雨空白域」と考えることができる可能性を示唆し(牛山・寶,2003),このような地域では豪雨災害に対する認識が落ちている可能性を懸念した.今回豪雨の発生した,三条,栃尾など新潟県中・南部は,この「豪雨空白域」と見なせる地域であり,近年豪雨が発生していなかったことが,防災意識に何か関係していたか,関心が持たれる.この地域で豪雨が発生しないわけではなく,下に書くように栃尾の1979年以降最大24時間降水量は216mmだったが,過去に342mmという日降水量の記録がある.三条でも,1979年以降最大値は155mmだが,1978年以前では1961/8/5に184mmがある.ちなみに,7月18日に豪雨災害が発生した福井県嶺北地方も「豪雨空白域」であった.

溺死者の多さは長崎豪雨以来?
本災害の死者の死因は,17日消防庁資料によれば,土砂災害によるもの2名,用水路などに転落したと思われるもの2名,12名は洪水による溺死と思われる.近年の豪雨災害による死者の死因は,土砂災害による者が中心で,他には,歩行中や車で走行中に川などに転落したことによる犠牲者が見られる状況であった.直接,洪水そのものによる死者は近年ほとんど発生していなかったと言っていい.1971年以降,1府県における床上浸水3500棟以上,死者15名以上の被害を生じた豪雨災害は,1970年代8事例,1980年代4事例,1990年代1事例である.まだ詳細に検討できていないが.1980年代以降の5事例を見ると以下のようになる. おそらく,今回の溺死による犠牲者は,1982年長崎豪雨以来の規模であると見てよいと思われる.

過去の豪雨記録
栃尾の1951年以降の最大日降水量は342mm(1961/8/5)で,AMeDAS以降の24時間降水量最大値(216mm)よりだいぶ大きい.今回の24時間降水量(421mm)には及ばないか,前後の日を合わせた検討が必要.1926/7/28-30にも栃尾付近の刈谷田川流域で,1961年の豪雨に匹敵する事例があったらしいが詳細未確認(気象庁技術報告No.48).周辺地域の記録としては,長岡293mm(1961/8/5)などもある.より山間部についてはまだ情報が十分でない.

iモード災害用伝言板サービスの初使用
13日付新潟日報記事によると,「県内の集中豪雨による被災者の安否確認手段として、NTT東日本とNTTドコモの両新潟支店は13日午後4時から、災害用の伝言サービスを始めた。」とのこと.ドコモの伝言サービスは「iモード災害用伝言板サービス」のことである.毎日新聞等の記事検索で確認した限り,おそらく2004年1月に運用が開始されて以降,最初の実用事例である.

市民からの情報提供呼びかけ
見附市役所の災害情報ページに「市内の交通止め、避難所からの要望、被害状況など情報がありましたら、FAX、またはEメールで情報提供をお願いします。」とあった.三条市役所でも同趣旨の表示有り.「双方向掲示板」などなくても,市民からの情報を集積しようという動きが見られるようだ.

学校に子供たちを残したことはむしろ英断?
14日付新潟日報によると,「学校で一夜を明かした南蒲中之島町立中之島中央小と中之島中の生徒・児童計471人は、水が引き始めた14日早朝から保護者に付き添われ帰宅を始めた。」とのこと.また,14日付毎日新聞によると,「県教委によると、6市町村の小中学・高校計20校の児童生徒1094人が通学路が寸断したり、保護者と連絡がつかず、校内に取り残された。」とのこと.どのような状況であったのか,確認が必要だが,警報発表時などに,無理に児童生徒を帰宅させることがかえって危険であるとの指摘が従来よりなされており,児童生徒を学校にとどめたことはむしろ評価できるかもしれない.

関連リンク

※本災害に関しての網羅的なリンクを作成することを目指しているものではなく,筆者の調査研究上の必要に応じて作成しているものです.

静岡大学防災総合センター 教授  牛山 素行
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